折々のうた

ふるひ寄せて

白魚崩れん

(ばか)りなり

夏目 漱石(なつめそうせき)

『漱石全集』所収。明治三十年二月、五高教授として熊本にあった漱石が、東京で多くは病床にあった友人正岡子規に、添削を求めて月々定期便のように送った句稿中の句。松山中学在勤中の二十八年以来毎月続けていた習慣で、句数も多く作風も多様、漱石の俳人としての面目を示している。芭蕉の「明ぼのやしら魚白きこと一寸」以来白魚の佳句も多いが、この句は網にかかった白魚の透けるほど可憐な体を、「崩れんばかり」と言いとって、余情がある。