折々のうた

伊勢の海の

沖つ白波(しらなみ)花にもが

包みて妹(いも)(いへ)づとにせむ

安貴王(あきのおおきみ)

『万葉集』巻三。「もが」は願望・希求をあらわす助詞。「家づと」は家へのみやげ。伊勢の海の沖に立つ白波、これはまた何と面白いものだろう。まるで花のようだ。そうだ、あれが花であったらいいのに。大事に包んで都の妻へ旅のみやげにしようものを。素朴きわまる歌だが、背景には日ごろ大和に住んで海を知らぬ生活をしていた人々の、海に接した驚きと喜びがあるだろう。驚きがある所、常に詩はある。