折々のうた

おのが灰

おのれ(かぶ)りて

消えてゆく

木炭の火に

たぐへて思ふ

太田 水穂(おおたみずほ)

『老蘇の森』(昭三〇)所収。水穂は島木赤彦や窪田空穂と同じく信州出身の歌人で同世代。和歌史、俳諧史の研究にも多くの業績がある。右は最晩年の作。炭火はあかあかと燃え、しだいに表面からふうわりと柔らかい灰に変わってゆく。自らを、白い灰をかぶりつつ静かに消えてゆく炭の命にたぐえて、自分の生涯のはての日を思いやっているが、決して単にひえびえとした寂寥を歌っているのではない。作者の死生観だけでなく、芸術観を示す歌でもあろう。