折々のうた

はかなくて

木にも草にも

いはれぬは

心の底の

思ひなりけり

香川 景樹(かがわかげき)

家集『桂園一枝』所収。江戸後期の歌人・歌学者。禅を学び、内省的な歌に独特の深みを持つ秀歌が多い。右の歌、わが心底の思いはまことにはかなくて、木草にさえ告げることもできないほどだ、というのが表面の意味だが、作者はむしろそう言うことによって、口に出してしまえばいかにもありふれて見える「心の底の思ひ」の、いとおしさ、かけがえのなさを語っていると感じられる。さりげなく人心の機微にふれたいい歌である。体験の深さによる。