折々のうた

めん鶏ら

砂あび居たれ

ひつそりと

剃刀研碑とは

過ぎに行きにけり

斎藤 茂吉

『赤光』(大二)所収。「七月二十三日」と作歌日付をそのまま題とした五首の一つで大正二年作。日ざかりの庭でめんどりどもがしきりに砂をあびている。かたわらを剃刀とぎ師(とぎ屋とよばれた)がひっそり通っていった。ただそれだけの光景なのに、不気味に張りつめた静けさがある。ゴッホの絵が与えるある種の不安な感じに似ているところがある。「ひつそりと」の一語、千鈞の重みがある。