折々のうた

()のまより

もりくる月の影見れば

心づくしの秋は来にけり

よみ人しらず

『古今集』秋上。「心づくし」は心を尽くさせること。秋になると野山の趣が変わってあちらにもこちらにも美しく色づきはじめた自然界のすがたがある。しかもそれらはたちまち過ぎ去ってゆくつかのまの黄金の輝きである。それを思うたびに気がもめる。それが「心づくしの秋」。こちらの主観的な気分に重点をおいて、実は秋の情感を客観的に深くとらえた含蓄ある表現が受け、『源氏物語』その他にひろく愛用された。