大岡信の詩

肖像

荒けずりの額のなかに
野や街が沈んでいる
きみはいつも
めざめの裏側からやってきた
その出現は
沖をめぐる微風のような
始まりのない持続
樹々が姿を消した森にわなないている
永遠の正午 永遠の伝説

鳥のあしゆびを炎がふちどるゆうべ
きみは小さな燃える雲だ

きみのなかの子午線や
あざやかな環礁のうえを
まっさおな魚が群れて通る
藻のあいだには 遙かな塔をみつめている

その燃えつづけるコロナ

きみは裏を貼ってない 鏡だ
涯しらずその内側にぼくは墜ちる
あるときは
きみの内部に垂れている ブランコ
子供らの姿はなく
秋がひっそり腰かけている

だがきみは
とりわけ天に逆流する美しい嵐
稲妻を越え 期待を越えて
宇宙のへりに差しのべられた十本の指
その熱い 唇のように感じやすい 指さき

はるかな微風が
きみに海のイメージをかえす
灼けている さわやかな腋毛
きみは無限に歩む

動きにこそ 形がみごとに保たれていると