かんがへて

飲みはじめたる

一合の

二合の酒の

夏のゆふぐれ

若山 牧水

『死か芸術か』(大一)所収。牧水は恋と旅と酒の歌でこよなく愛誦される。ふつふつと湧きあがる思いがそのまま三十一音の歌となって、作者の孤独な心をあめつちの間に舞わせ、読者をも招き寄せた。それにしても、牧水歌集を読んでいると、彼の酒の歌が早くから老成していたことに今さらながら驚く。二十代半ばすぎでもうこんな歌があり、また「白玉の歯にしみとほる秋の夜の酒はしづかに飲むべかりけり」があった。みな独酌好みの歌だ。