水鳥の

背に残りゐる

夕明り

(うみ暮れゆけば

ただ仄かなる

大岡 博

『渓流』(昭二七)所収。明治四十年生まれの現代歌人。窪田空穂に師事した。第一歌集巻頭歌で昭和七年の作。湖は芦ノ湖。日が山の背に沈んでゆく。最後の光が水鳥の背にだけぽつんと仄かに残っているのを、見るというよりは、感じている。外界の仄明りは、実は青年内面の薄明鏡なのかもしれない。作者は本書著者の父親で、当時二十五歳、著者は一歳だった。日ごろ愛誦の歌なので引く。