鎌倉や

御仏なれど

釈迦牟尼は

美男におわす

夏木立かな

与謝野 晶子

『恋衣』(明三八)所収。尊い大仏を美男よばわりしたと、発表当時謹厳な伊藤左千夫らに痛罵された歌。しかし古来にほんの詩文には仏の目鼻だちの麗わしさをたたえたものは数多い。晶子の歌もそういう感覚で作られているものだろう。近代特有の厳粛主義では律しきれない庶民的な生活感覚がそこに生きている。ただし、鎌倉の大仏は晶子の実感した釈迦ではなく阿弥陀仏で、彼女も後年自分の誤りに気づいた。しかし歌を作りかえようとは思わなかった。