行きなやむ

牛のあゆみに

たつ塵の

風さへあつき

夏の小車

藤原 定家

『玉葉集』夏歌。牛車、つまり牛にひかせる乗用の屋形車だろうか。炎天にあえぎ、人はもちろん牛までものろのろ歩む。その足元から乾いた塵ほこりが舞いたつ。風がたてば涼しいはずなのに、塵をまきあげる炎天の風はかえって暑くるしさを増す。抜群の耽美的作風の歌人定家に、この印象的な作があるおもしろさ。「むしますなあ」「どこぞ涼しい川べりにでも」。古都の夏は王朝の余映の時代にもやはり暑かったのだ。