金粉を

こぼして

火蛾や

すさまじき

松本 たかし

『松元たかし句集』(昭一〇)所収。室生流能役者の家に生まれたが病身でその道を断念し、虚子門に俳人となった。火に慕い寄り、焼かれつつ舞いつづける蛾。「金粉」をこぼして乱舞するその「すさまじき」姿に、命の不可解な力と美がある。画家速水御舟の名作「炎舞」や、ゲーテ晩年の詩「浄福的な憧れ」が、死して無限の生命を得ようとすう火蛾を一方は描き、一方は歌っていたのも思い合わされる。