閑かさや

岩にしみ入る

蝉の声

松尾 芭蕉

『奥の細道』山形の立石寺(土地ではリッシャクジという)参詣のくだりに出る。元禄二年五月二十七日(陽暦七月十三日)。同寺の全山凝灰岩でできた境内は、今も「心澄みゆく」「清閑の地」の面影を残す。句は芭蕉秀吟中の秀吟。断続するサ行音が、日本詩歌の鍵ともいえる「しみ入る」感覚、その澄明幽遠さを表現する。蝉が鳴きしきっていても、その声のかまびすしさがきわまる所には浄寂境そのものが出現するという宇宙観。