ゆふぐれは

雲のはたてに

ものぞ思ふ

天つ空なる

人をこふとて

よみ人しらず

『古今集』巻十一恋。「雲のはたてに」は雲のはてに。「天つ空なる人」は天上にいる人、つまり手も届かぬはるかな高みにいる思い人。作者はたぶん男性で、思う相手は、当時の身分制度のもとでは手の届かぬ高嶺の花の女性だったのだろう。しかし一首には、そういう現実の事情をこえて、恋する人に共通のあこがれと悩みが歌われている。この歌は広く愛誦され、空をながめて嘆く片思いの歌の一典型となった。