天の海に

雲の波立ち

月の船

星の林に

漕ぎ隠る見ゆ

柿本人麻呂歌集

『万葉集』巻七雑歌冒頭。広大な天の海。底に浮かぶ雲は、立つ白波だ。月の船がそこを渡って、星の林に隠れてゆく。『万葉集』にはすぐれた叙景歌が多いが、中での異色作。「星の林」という見立てかたが面白い。原文の万葉仮名は「天海丹 雲之波立 月船 星之林丹 榜隠所見」。天海を漕ぎ渡る月船を見ながら、他の星からくるUFOのごとき物体を夢みた古代人もいたかもしれない。