ただひとり岩をめぐりて
この岸に愁を繋ぐ

島崎 藤村

『落梅集』(明三四)所収「千曲川旅情のうた」の最終二行。この詩はのち同集の「小諸なる古城のほとり」と合わせて「千曲川旅情のうた」一・二番となり、その二をなす。四行四連、藤村詩中最も有名な作だろう。千曲川の古城跡にたたずみ、戦国武将の栄枯の跡を回想し、「嗚呼古城なにをか語り 岸の波なにをか答ふ」と嘆じつつ、ひとり岸辺をさまよう近代の旅人の愁いをうたう。