春の夜の

霞の()より

山の()

ほのかに見せて

いづる月影

藤原 為氏(ふじわらのためうじ)

『続拾遺集』巻二春下。鎌倉中期の歌人。昨日の為家の嫡男。俊成以来の歌の名門の生まれだが、二条家の祖として同母弟為教(京極家)、異母弟為相(冷泉家)と骨肉の争いもあった。これは『古今集』紀貫之の恋歌「山桜霞の間よりほのかにも見てし人こそ恋しかりけれ」を本歌取りした歌。「山の端をほのかに見せて」のあたりに父為家より鋭い所が見え、後の『玉葉集』『風雅集』の叙景歌を予告している。