朝凪(あさなぎ)

海士(あま)(いさ)りぞ

思ひやる

春のうららに

日はなりにけり

藤原 為家(ふじわらのためいえ)

『夫木和歌抄』巻五。鎌倉中期の歌人。古今の大歌人藤原定家の嫡男で、俊成の孫。青年期は蹴鞠(けまり)に夢中で父親を嘆かせたが、翻意して歌に精進、歌界の重鎮となる。家風は父の壮年期までとはむしろ逆に、ひたすらなだらかに「清げなる」姿をよしとした。その平淡美追求の姿勢は右の歌にもうかがえよう。近代以後の生活実感を重んじる写実の歌に較べると食いたりないが、中世には広く影響力を及ぼした歌風である。