春寒し

水田の上の

根なし雲

河東 碧梧桐(かわひがしへきごとう)

『新俳句』(明三一)所収。明治六年松山市に生まれ、昭和一二年没の俳人。同郷の先輩子規を中心に虚子とともにもりあげた俳句革新運動では、大きな足跡を残したが、新傾向唱導以降の歩みは、虚子の花鳥諷詠思想の隆盛に比して孤影が著しい。右は初期の作で、子規も佳句とほめた句。景も情も特に工夫をこらしてはいないが、この根なし雲の透明感はいかにも「春寒し」。後世から見ると作者の一生を暗示するようにもみえる。