春雷(しゅんらい)

蒲団(ふとん)の上の

旅衣(たびごろも)

島村 元(しまむらはじめ)

『島村元句集』(大一三)所収。大正中期以降虚子が強く唱えた客観写生の考えを信奉し、大いに嘱望された「ホトトギス」の俊秀。生来の豊かな情感が写生の句に清新なうるおいを与えた。大正十一年、虚子と九州旅行中に、青年時代からの結核が再発、翌年三十一歳の若さで没した。右は十一年、旅中の作。ふとんの裾のあたりにぬいだ服をのせて寝るつつましい旅人。この時聴くべくは春雷にしくものもなかったろう。そう思わせるところにこの句の魅力がある。