ただ 人には馴れまじものぢや

馴れての(のち)

離るる るるるるるるが

大事(だいぢ)ぢやるもの

閑吟集(かんぎんしゅう)

歌謡の主題で最も一般的なものは男女の愛。神話伝承時代の歌謡から現代にいたるまで、その事情は変わらない。よくも飽きずに、と思うが、逆にいえば、この主題はそれだけ普遍的かつ多様なのである。室町歌謡の作者、特に遊女らは、「ただ人は情けあれ」と歌いつつ、他方ではこんな歌も歌ったのである。「ぢやる」は、であるの転。惚れるは簡単、別れるは大事。この単純な真実が、大むかしも今も人を苦しめる。