薄氷(うすごほり)

雨ほちほちと

(とほ)すなり

加舎 白雄(かやしらお)

『白雄句集』所収。白雄は十八世紀末の天明俳壇では名実ともに江戸を代表する俳人だった。「弟子けだし四千人、世に知らるゝ者二百有余人」と門弟が書いているが、白雄の傑出していた理由の一つは、それほどの有名俳人でありながら、句は虚飾誇大に走らず、繊細幽玄の境地を保ったこと。この句は薄氷に降る雨が「ほちほち」と氷に穴をうがって沈んでゆくさまを描く。こういう句を読むと、日本語に多い擬音の魅力を思い知らされる。