仏は常にいませども

(うつつ)ならぬぞあはれなる

人の音せぬ(あかつき)

ほのかに夢に見えたま

梁塵秘抄(りょうじんひしょう)

古今を通じて最もよく知られ愛誦されている仏教歌謡の一つだろう。天台宗で重んじられた法華経の教理を歌謡でうたった。仏は常任不滅だが、凡夫にはまのあたり拝することができないので、一層しみじみと尊く思われる。しかし夜通し一心に祈ったその暁、仏はほのかに夢の中に姿をお見せになるのだ。仏が夢中に示現するというのは、平安ころの信仰者にとって少しも異常な事ではなかった。