くさかげの

なもなきはなに

なをいひし

はじめのひとの

こころをぞおもふ

伊東 静雄(いとうしずお)

詩人伊東静雄が作った珍しい短歌。詩集『夏花』(昭一五)で透谷賞を与えられた時、さっそく祝いの歌を寄せた友人池田勉に対する返礼として書いたのがこの歌で、伊東の書簡集の中に見える。自分の詩集を「草かげの名もなき花」に擬し、最初に祝いのことばをかけてくれた、つまり「名」をよんでくれた人への感謝を下句でつげているわけだが、そんな事情を離れて読んだ方がかえって味わいの深い歌として読めるようである。