なのはなの

雲を(むす)なる

(にほ)(かな)

三宅 嘯山(みやけしょうざん)

『葎亭句集』所収。どこまでも続く花盛りの菜の花畑、それも今では珍しい光景になってしまったが、この句の中ではありありとその菜の花畑が生きて呼吸している。菜の花のにおいが「雲を蒸す」という形容は非凡だ。単なる空想からは生まれ得ない江戸時代の厚味ある実感がある。湿り気の多い晩春の陽光がすでに夏を思わせてむし暑いほどの午後、見渡すかぎり鮮烈な黄色の世界が、野面に広がっている。