一雫(ひとしづく)

こぼして延びる

木の芽かな

有井 諸九(ありいしよきゆう)

『諸九尼句集』所収。有名な加賀の千代女とほぼ同時代に生きた筑後(福岡)出身の女性俳人。「行春や海を見て居る鴉の子」のような、切れ味のいいせいせいとした句を作った。右の句も彼女の鋭い感覚と的確な表現力がみごとにあらわれている句である。しだいにふくらみはじめた木の芽に、春雨がやわらかくかかる。一滴垂れるたびに、芽も一緒にひき延ばされていく感じ。実際そのようにして木の芽は育つ。