(とこ)寒く枕(ひやや)かにして

(よあけ)に到ること遅し

(あらた)めて起きて

灯前(とうぜん)に独り詩を詠む

菅原 道真(すがわらのみちざね)

『菅家文草』巻四「冬夜九詠」中の「独吟」より。天神様といえばだれでも知っている平安前期の悲運の学者・政治家。平安朝漢詩人中の大才で、長短五百余首の詩を『菅家文草』、同『後草』に残した。寒気きびしい冬の夜はなかなか明けない。一旦床についたものの、眠れないまま再び起き出して灯火に向かい、深沈として詩句を練る。続く句は、「詩興変じ来たりて感興をなす/身に関わる万事 自然に悲し」。詩句の運びに実感がこもる。