ほのほのみ

虚空(こくう)にみてる

阿鼻地獄(あびぢこく)

行方(ゆくへ)もなしと

いふもはかなし

源 実朝(みなもとのさねとも)

『金槐集』所収。仏教思想を短歌形式でうたう「釈教」の歌。「阿鼻地獄」は無間(むげん)地獄とも言い、極悪人がおちる地獄とされる。燃えさかる炎以外に何もない地獄の釜だ。五逆罪をおかした人間はここで焼かれつづけ、どこへ逃げようもない。実朝は鎌倉幕府の若き将軍なるがゆえに非業の死に見舞われた。下句には思いなしか、その運命の予感があるようだが、歌そのものは生きとし生けるものすべての悲しみを、詠嘆というよりはむしろ思索的に歌っている。