冬蜂の

死にどころなく

歩きけり

村上 鬼城(むらかみきじょう)

『鬼城句集』(大六)所収。三十年にわたり高崎裁判所の代書人だったが、極度の難聴に加え十人の子をかかえた生活は貧窮をきわめた。五十二歳の大正六年に『鬼城句集』が出るに及んで俳名一時にあがり、生活もようやく安定した。子規、ついで虚子に師事したが、慶応元年生まれで二人より年長、句は旧派俳諧からも栄養をとりつつ、境涯吟に独歩した。初冬、生き残りの蜂を見て得た感を、突き放しつつ痛切に詠んだ代表作。