むしぶすま

(なご)やが下に臥せれども

(いも)とし寝ねば

肌し寒しも

藤原麿

『万葉集』巻四相聞歌。藤原氏隆盛の基盤を作った不比等の四男。奈良県の各種重要事務を司る役所の長官京職大夫(きようしきだいぶ)の地位にあった。これは愛人大伴坂上郎女(おおとものさかのうえのいらつめ)に贈った恋歌の一首。「むしぶすま」のムシは苧麻(からむし)の繊維。フスマは寝具で、ムシブスマは柔らかく暖かかった。その寝床に入っていても、あなたと一緒でないと肌寒いよ、と単刀直入に訴える。日本の恋歌の大きな伝統は、一人寝の肌寒さを嘆く歌にある。この率直な歌もその古代の好例だ。