人の親の

心は闇に

あらねども

子を思ふ道に

まどひぬるかな

藤原兼輔

『後撰集』巻十五雑一。京の加茂川の堤に邸があったので堤中納言とよばれた人。紀貫之ら当時の代表的な文学者たちのパトロン的存在だった。紫式部の曾祖父に当たる。親の心は夜の闇とは違うのに、子のことを思う道はまっくら闇、途方にくれるばかりだ、というこの歌、平安時代すでにきわめて有名で、『源氏物語』でも数えると最も多く引き合いに出されているという。時は移ってもこの歌の溜息は生き続けているようだ。