水鳥を

水の上とや

よそに見む

我れも浮きたる

世を過ぐしつつ

紫式部

『紫式部集』所収。「水鳥どもの思ふことなげに遊びあへるを見て」という詞書がある。大意は次のようなことだろう。水鳥は何の思い患うこともなく泳ぎ廻っているのだと、よそごとのように見ていられるだろうか。私だとて水に浮く鳥同様、華やかに浮いた宮中の生活を営みながら、水面下の水鳥のあがきのように憂き日々を送っている身なのだ。「浮き」に「憂き」がかかり、平安女流の複雑な心の陰影を歌いとめている。