物おもふ

身にもの喰へと

せつかれて

月見る顔の

袖おもき露

芭蕉 珍碩(ばしょう ちんせき)

『ひさご』「花見の巻」。前句は恋、それへの付句は月を扱う。連句では恋も月も、とりわけ腕の見せどころ。「物おもふ身」は恋わずらいする娘。それとも知らぬ母親は、しきりに案じて食べろとすすめる。その親心にまた一層袖の露(涙)が重い。見あげる月には思う人の面影ばかりが映っている。芭蕉が「もの喰へ」「せつかれて」と俗にくだけて庶民の娘の恋を描けば、珍碩は上流お嬢さん風のつつましい恋で応じた対照の妙。