曼珠沙華

抱くほどとれど

母恋し

中村 汀女

『汀女句集』(昭一九)所収。虚子が「ホトトギス」を通じて起こした女流俳句興隆気運の中から踊り出た一人で、平明な言葉の中に豊かな感性が生きて躍動している句が多い。作者は一人娘で両親の愛を一身に受けて育った。嫁いで故郷を離れたが、母恋いの心は、三十を過ぎて三人の子持ちとなってもなお、このように甘美に流露する句を作らせた。「抱く」の一語がおのずと「母」を招き寄せたか。