やはらかに柳あをめる

北上の岸辺目に見ゆ

泣けとごとくに

石川 啄木

『一握の砂』(明四三)所収。幼少年期を送った故郷岩手県渋民村への愛と憎とは、北海道の流浪生活を経て東京へ出た啄木の中でますます強まっていた。啄木は生活苦と病苦に追われ、小説家たらんとする希望もむざんにうちくだかれ、かつて石もて追われるごとくに逃亡した故郷をさえ、しみじみ恋しく思う日も多かった。『一握の砂』には、東京の借家にあって泉のように噴きあがってきた望郷の歌が、たくさん収められている。