遠き樹の

上なる雲とわが胸と

たまたま逢ひぬ静かなる日や

尾上 柴舟(おのえさいしゆう)

『静夜』(明四〇)所収。落合直文のあさ香社の門下から出た。明治後期、自然主義に呼応して叙景詩運動を短歌界で推進した。優美な仮名文字の書家としても名高い。歌は今日から見ると淡白に過ぎる感もあるが、右の歌ではその淡白さがかえってゆったりした味わいを生んでいる。遠く樹上にかかっている白雲が、自分の心の思いにふと寄りそう感じがしたのだ。静けさがそれで一層深くなった。