秋の月光(ひかり)

さやけみもみぢ()

おつる影さへ見えわたるかな

紀貫之

『後撰集』秋。「さやけみ」はさやかなので。貫之は『古今集』の代表歌人で『土佐日記』の作者。宮廷詩人の本領たる「(はれ)」の歌に抜群の力量を示した。物を印象的にとらえる訓練をつんでいたことは右の歌でもよくわかる。秋のさやけさは当時の歌人の好題材だったので、『古今集』には「白雲にはねうちかはしとぶかりのかずさへ見ゆる秋の夜の月」のような「よみ人しらず」の秀歌もある。