君待つと

わが恋ひをればわが屋戸(やど)

すだれ動かし秋の風吹く

額田王(ぬかたのおおきみ)

『万葉集』巻四相聞。「額田王、近江天皇を(しの)ひて作る歌」と詞書。万葉女流中にその名も高い額田王は、大海人(おおあま)皇子の妃だったが、のち皇子の実兄天智天皇(近江天皇)の妃の一人となった。いつおいで遊ばすかと心待ちにしていると、戸口のすだれが動く。秋風がすだれをそっと揺すっているのだったが、私の心もすだれとともに、ほんのわずかな風にもゆらぐのだ。ごく自然に詠んでいて中身は濃い。作者の力量を示した恋の歌。