また(ひぐらし)のなく頃となつた

かな かな

かな かな

どこかに

いい国があるんだ

山村 暮鳥(やまむらぼちょう)

『雲』(大一三)所収。大正初期に前衛詩の先頭走者だった暮鳥は、短い四十年の生涯の果て、このような単純さに達した。その詩風の変化は、それ自体日本近代詩史に投げかけられた重要な設問といった性格のものだが、彼自身は『雲』序文で「だんだんと詩が下手になるので、自分はうれしくてたまらない」と書いている。元来が信仰者だった詩人の魂が、貧苦と病苦に洗われて、いわば骨だけの詩に達したのである。