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思ひつつ寝ればや人の見えつらむ ゆめとしりせばさめざらましを
小野小町(古今集/巻12・552)

大ヒット中の映画「君の名は。」。新海誠監督がこの映画の制作の引っ掛かりとしたのが、小野小町の歌だったことは、インタビュー等で知られています。
この歌について、詩人の大岡信は、次のような現代語訳と解説を記しています。
いま話題のこの歌を、しっかり鑑賞してみませんか?

(現代語訳)

思いつづけて眠ったからか
恋しい人にうれしく逢えた
ああ もしこれが夢であると
眠りのなかで知りえたならば
二度とさめずにいたかったものを

(解説)

小野小町という人は、残っている歌の数に比して夢の歌の多い作者である。このことは注目すべき点であろう。
夢というのは、昔から神秘な魂の感応のあらわれと信じられてきた。たとえば人を思いつづけて寝たために、思い寝の夢を見るとか、自分もある人を思っていたのだが、たまたま相手の人も自分を思っていてくれていたらしく、その人の夢を見ることができたとか、古代の人は夢の中でおたがいが通じ合うものと信じていた。夢の通い路を通って、恋する相手に逢えるという思想は信仰に近いもので、夢でなりとも逢いたいと思うときなど、そのためのおまじないまであったようである。こういう種類の、夢のいくつかの姿が小町の歌にはあり、これもその一首である。
歌われている内容は率直明瞭で、なんの作意もないが、心の動く瞬間の現実をするどく捉えている。それを柔らかい調べが包みこみ、思いの深い歌にしている。
「思ひつつ」の「思ひ」は、恋の思いで、嘆きを意味している。「つつ」は継続。「寝ればや人の」の、「や」は疑問、「人」は、思う人。「さめざらましを」の「まし」は、「せば」と照応させたもので、現実とは反する事態を仮想する助動詞。「を」は詠嘆。残念な気持ちをこめたもの。
大岡信『古今集・新古今集』(学習研究社 2001年)より

kokin

ちなみに、2014年、大岡信ことば館で「新海誠展 きみはこの世界の、はんぶん。」を開催しました!
今回の映画の大ヒットをうれしく思っています。今後も新海誠監督の活躍に期待しております!