展覧会「365日、ことばの旅。『折々のうた』をおもちかえり展」では、大岡信が選んだ詩歌のコラムを1年365日分紹介しています。ここでは、展示されている365のコラムの中から、おもちかえり数が多いものをランキング形式でご紹介します!日付は、展覧会に使用している書籍『折々のうた 三六五日』(岩波書店)に掲載されている日付を表しています。(更新日:2015/06/11)

[順位/作者名/(日付)/うた]

1.谷川俊太郎(8月11日)
黙っていた方がいいのだ/もし言葉が/言葉を超えたものに/自らを捧げぬ位なら
2.西行法師(4月13日)
ねがはくは花のもとにて春死なむその如月の望月のころ

3.コクトー(1月31日)
私の耳は貝のから 海の響をなつかしむ
3.明恵上人(2月9日)
あかあかやあかあかあかやあかあかや あかあかあかやあかあかや月
3.石川啄木(2月12日)
こころよく/我にはたらく仕事あれ/それを仕遂げて死なむと思ふ
3.岡本かの子(3月31日)
桜ばないのち一ぱい咲くからに生命をかけてわが眺めたり
3.坂本龍馬(5月21日)
藤の花今をさかりと咲きつれど 船いそがれて見返りもせず
3.ヴィニシウス・リベイロ(6月5日)
言葉ってものは/傷つけもするし幸せにもする/単純な文法です
3.佐藤春夫(9月27日)
君が瞳はつぶらにて 君が心は知りがたし。 君をはなれて唯ひとり 月夜の海に石を投ぐ。
3.斎藤茂吉(9月30日)
あかあかと一本の道とほりたり たまきはる我が命なりけり
3.良寛(10月8日)
世の中にまじらぬとにはあらねどもひとり遊びぞ我はまされる
3.室生犀星(11月12日)
ふるさとは遠きにありて思ふもの そして悲しくうたふもの
3.草野心平(12月22日)
中原よ。/地球は冬で寒くて暗い。//ぢや。/ さやうなら。
4.種田山頭火(2月1日)
こしかたゆくすゑ雪あかりする
4.鹿児島寿蔵(2月15日)
音たててキャベツをきざむ吾が母よとみにめしひし人と思はれず
4.中原中也(5月10日)
樹脂の香に 朝は悩まし うしなひし さまざまのゆめ、森竝は 風に鳴るかな
4.与謝野晶子(7月12日)
よしあしは後の岸の人にとへ われは颶風にのりて遊べり
4.竹久夢二(7月17日)
まてどくらせどこぬひとを/宵待草のやるせなさ/こよひは月もでぬさうな。
4.額田王(7月31日)
君待つとわが恋ひをればわが屋戸のすだれ動かし秋の風吹く
4.山上憶良(8月15日)
萩の花 尾花 葛花 瞿麦の花 女郎花 また 藤袴 朝貌の花
4.雨宮雅子(9月9日)
生き残る必死と死にてゆく必死 そのはざまにも米を磨ぎゐつ
4.梁塵秘抄(10月7日)
遊びをせんとや生れけむ 戯れせんとや生れけん 遊ぶ子供の声聞けば 我が身さへこそ動がるれ
4.正岡子規(10月12日)
行く我にとどまる汝に秋二つ
4.寺山修司(10月15日)
マッチ擦るつかのま海に霧ふかし身捨つるほどの祖国はありや
4.芥川龍之介(10月26日)
木がらしや目刺にのこる海のいろ
4.一遍上人(11月11日)
いにしへはこゝろのまゝにしたがひぬ 今はこゝろよ我にしたがへ
4.向井去来(12月8日)
尾頭の心もとなき海鼠哉
4.水原秋桜子(12月9日)
冬菊のまとふはおのがひかりのみ
4.松尾芭蕉(12月10日)
旅に病んで夢は枯野をかけめぐる
4.尾崎放哉(12月25日)
咳をしても一人
5.智恵内子(1月1日)
通りますと岩戸の関のこなたより春へふみ出すけさの日の足
5.大伴家持(1月3日)
新しき年の始の初春の今日降る雪のいや重け吉事
5.飯田蛇笏(1月4日)
わらんべの溺るるばかり初湯かな
5.二条のきさき(1月5日)
雪のうちに春は来にけり鶯の氷れる涙いまや解くらむ
5.久保より江(1月7日)
ねこに来る賀状や猫のくすしより
5.久保田万太郎(1月8日)
竹馬やいろはにほへとちりゞに
5.道元(1月11日)
心とて人に見すべき色ぞなきただ露霜の結ぶのみ見て
5.夏目漱石(1月12日)
孤愁 鶴を夢みて 春空に在り
5.加藤楸邨(1月18日)
鮟鱇の骨まで凍ててぶちきらる
5.高村光太郎(1月19日)
海にして太古の民のおどろきをわれふたたびす大空のもと
5.稲畑汀子(1月23日)
一片を解き沈丁の香となりぬ
5.安西冬衛(2月3日)
てふてふが一匹韃靼海峡を渡つて行つた。
5.与謝野寛(鉄幹)(2月8日)
老いたるは皆かしこかりこの国に身を殺す者すべて若人
5.伊東静雄(2月13日)
くさかげのなもなきはなになをいひしはじめのひとのこころをぞおもふ
5.小林一茶(2月17日)
春風や鼠のなめる隅田川
5.菅原道真(2月19日)
哀しきかな 放逐せらるる者 蹉跎として精霊を喪へり
5.小野小町(2月28日)
あはれなりわが身のはてやあさ緑つひには野べの霞と思へば
5.紀友則(3月3日)
君ならで誰にか見せむ梅の花 色をも香をもしる人ぞしる
5.宋之問(3月6日)
年々歳々花あひ似たり 歳々年々人同じからず
5.土岐善麿(3月7日)
春の夜のともしび消してねむるときひとりの名をば母に告げたり
5.白居易(3月8日)
琴詩酒の友皆我を抛つ 雪月花の時に最も君を憶ふ
5.原阿佐緒(3月10日)
吾がために死なむと言ひし男らのみなながらへぬおもしろきか
5.野沢凡兆(3月11日)
さまざまに品かはりたる恋をして 浮世の果は皆小町なり
5.長谷川櫂(3月15日)
目を入るるとき痛からん雛の顔
5.堀口星眠(3月21日)
蒲公英の絮吹いてすぐ仲好しに
5.杉田久女(4月6日)
花衣ぬぐやまつはる紐いろゝ
5.紀貫之(4月10日)
さくら花ちりぬる風のなごりには水なきそらに波ぞ立ちける
5.会津八一(4月21日)
はつなつのかぜとなりぬとみほとけは をゆびのうれにほのしらすらし
5.萩原朔太郎(4月30日)
しづかにきしれ四輪馬車、/ほのかに海はあかるみて、/麦は遠きにながれたり
5.坪野哲久(5月11日)
鉛筆をこころゆくまで尖らせて 小学童子老人となる
5.鷹羽狩行(5月13日)
二滴一滴そして一滴新茶かな
5.川崎洋(5月27日)
犬も/馬も/夢をみるらしい//動物たちの/恐しい夢のなかに/人間がいませんように
5.柿本人麻呂歌集(5月29日)
天の海に雲の波立ち月の船星の林に漕ぎ隠る見ゆ
5.梁塵秘抄(6月8日)
美女打ち見れば 一本葛にもなりなばやとぞ思ふ 本より末まで縒らればや
5.隆達小歌(6月9日)
君まちて、待ちかねて、定番鐘の、其下でのじだゞじだだ、じだゞをふむ。
5.李白(6月10日)
蘭陵の美酒 鬱金の香 玉椀盛り来る 琥珀の光
5.八木重吉(6月13日)
ひとをいかる日/われも/屍のごとく寝入るなり
5.前登志夫(6月15日)
かなしみは明るさゆゑにきたりけり一本の樹の翳らひにけり
5.中村草田男(6月16日)
万緑の中や吾子の歯生えそむる
5.杜甫(6月17日)
酒債は尋常 行く処に有り 人生七十 古来稀なり
5.和泉式部(7月1日)
もの思へば沢の螢もわが身よりあくがれ出づる魂かとぞ見る
5.桂信子(7月3日)
ゆるやかに着てひとと逢ふ螢の夜
5.小野茂樹(7月4日)
あの夏の数かぎりなきそしてまたたつた一つの表情をせよ
5.藤田湘子(7月9日)
蚤も亦世に容れられず減りゆけり
5.与謝蕪村(7月10日)
涼しさや鐘をはなるるかねの声
5.渡辺白泉(7月11日)
戦争が廊下の奥に立つてゐた
5.一休宗純(7月15日)
垢なりや塵なりや 是れ何物なりや 元来見来れば 更に無骨なり
5.藤原敏行(7月29日)
秋来ぬと目にはさやかに見えねども風のおとにぞおどろかれぬる
5.山口青邨(8月16日)
人それゞ書く読んでゐる良夜かな
5.安倍仲麿(9月1日)
あまの原ふりさけみれば春日なる三笠の山にいでし月かも
5.大岡博(9月5日)
浪の秀に裾洗はせて大き月ゆらりゆらりと遊ぶがごとし
5.石牟礼道子(9月14日)
祈るべき天とおもえど天の病む
5.中城ふみ子(9月24日)
遺産なき母が唯一のものとして 残しゆく「死」を子らは受取れ
5.佐佐木幸綱(9月29日)
男と男父と息子を結ぶもの志とはかなしき言葉
5.松平盟子(10月10日)
世田谷区奥沢、深沢、下北沢 沢ありし世の涼しさ想う
5.高橋新吉(10月16日)
留守と言え ここには誰も居らぬと言え 五億年経ったら帰って来る
5.ポール・エリュアール(10月21日)
年をとる それはおのれの青春を歳月の中で組織することだ
5.木喰上人(11月9日)
ゆめの世をゆめでくらしてゆだんしてろせんをみればたつた六文
5.紫式部(11月13日)
水鳥を水の上とやよそに見む 我れも浮きたる世を過ぐしつつ
5.島崎藤村(11月24日)
われもまた渚を枕 孤身の浮寝の旅ぞ
5.西郷隆盛(11月27日)
我が家の遺法、人知るや否や 児孫の為に美田を買はず
5.閑吟集(11月28日)
なにせうぞ、くすんで、一期は夢よ、ただ狂へ。
5.カール・ブッセ(12月3日)
山のあなたの空遠く 「幸」住むと人のいふ。
5.山部赤人(12月7日)
ぬばたまの夜の更けゆけば久木生ふる清き川原に千鳥しば鳴く
5.馬場あき子(12月11日)
雪のやうに木の葉のやうに淡ければさくりさくりと母を掬へり
5.桜井梅室(12月18日)
ふゆの夜や針うしなふておそろしき
5.河野裕子(12月24日)
たつぷりと真水を抱きてしづもれる昏き器を近江と言へり
5.森澄雄(12月31日)
除夜の妻白鳥のごと湯浴みをり

 

※大岡信によるうたの解説は、「折々のうた」ページより一部ご覧いただけます。