レポート

 冬から春、そして夏へと三つの季節をまたいで開催した『365日、ことばの旅。「折々のうた」をおもちかえり展』。実際に、その季節「折々の」事象を体感しながら会期が進んでいきました。
 大岡信の代表的な仕事のひとつ「折々のうた」を紹介するとともに、気に入ったコラム(「折々のうた」のコピー)を持ち帰ることができるというのが、本展の最大の特徴でした。枚数を制限することで、来場者の方々は、真剣に、そしてじっくりと、取り上げられた詩歌や大岡信の鑑賞文に向き合うことができたようです。会場内には、テープやリングを用意して、選んだコラムを簡単に製本できるコーナーも設置。しっかりと製本して帰られる方が予想以上に多く、主催者として嬉しい驚きでした。来場記念やプレゼントとして活用され、また折々に読み返していただけたらと思います。
 また、「折々のうた」にならって、180字感想文にチャレンジしてもらう企画も実施。これは、好きな詩歌や展覧会の感想などを、「折々のうた」専用の原稿用紙を模した用紙に書き込むというものでした。180字という短い文章の中に、いかに伝えたいことをおさめるか。大岡信の仕事の一端を体感していただけたのではないかと思います。
 同時開催の「ときどきのうた」では、「折々のうた」に刺激を受けて作られた、詩人で童話作家でもある工藤直子さんの「のはらうた」を保手浜孝さんの版画で紹介。訪れた多くの「のはらうた」ファンにとっても、「折々のうた」との関わりを知ることができる良い機会となったようでした。「折々のうた」と「のはらうた」を通して、四季の移ろいと共に生き、その中でうたう喜びや、私たち人間にとっての詩という存在について感じていただけたなら幸いです。
 関連企画として開催した、詩人の谷川俊太郎さんと、工藤直子さんの対談には多くの聴講者が詰めかけました。お二人の大岡信に対する想い、そして意欲的な創作の姿勢に刺激を受けた聴講者の方も多かったと思います。また、俳人の長谷川櫂さんの講演会では、「直感の人・大岡信」が論理的に分かりやすく解説され、大岡信や「折々のうた」への理解を深めることができました。
 今回の展覧会を機に、絶版になっていた書籍「折々のうた 三六五日」(岩波書店 2002年)が重版され、また会期中に、谷川俊太郎編の大岡信の詩集「丘のうなじ」(童話屋 2015年)も刊行されるなど、大岡信への関心の高まりを感じる展覧会でもありました。今後も、様々な視点から大岡信について紹介していきたいと思います。