レポート

 2014年8月24日(日)、Z会文教町ビル3階で新海誠『クロスロード』メイキングセミナーが開催された。

 本セミナーは、Z会が新海監督に依頼して出来上がった受験生応援CM『クロスロード』のメイキングを中心に、監督自身が自作を解説するもので、定員180名のところに600名強の応募が殺到する人気ぶり。当日の会場はその高倍率を勝ち抜いた参加者でいっぱいとなった。

 新海監督の作品を読み解く鍵のひとつに、どうやら“遠くに行く”というモチーフがあるよう。過去作品を振り返りながらそれを追う、というところからセミナーがスタートした。

「もっと……遠くにあるはずのどこか……俺(私)はそこに行きたいんだ」

――海帆と翔太のそんなセリフが印象的な『クロスロード』も、やはりキーワードは“遠く”。

 CM制作時のコンセプトについて監督は、あえてZ会の商品やサービスを全面に出さないこと、受験の合否を“勝ち負け”としてとらえず、あくまでもその先に広がる未来に向けて努力する姿を前向きに描くことを意識したという。あわせて、企業から依頼されてCMをつくる場合、企業の理念と自分のつくりたいものがぴったり一致しないとCM制作は受けられない、との姿勢も語った。

 続いてより具体的な制作の話へ。『クロスロード』の絵コンテ、レイアウト、コンポジット等が紹介され、制作の裏側が丁寧に語られていく。

 新海監督作品といえば、緻密で繊細な描写も特徴のひとつ。『クロスロード』のワンシーン(海帆が自転車をこいで坂からあがってくる場面)を例に、影のつけ方、光の入り方、色の調整、背景の水面のきらめきなどをどのように表現しているかも解説。わずか数秒のシーンに、これほどまで手がかかっていることに会場から驚きの声があがった。改めて、さまざまなデジタル技術を駆使し、細部までつくりこまれたCMだということが伝わってきた。

 そして話題は「作画」へ。『クロスロード』でキャラクターデザイン・作画監督をつとめた田中将賀さんからのスペシャルビデオメッセージが流れたかと思うと、なんとご本人が登場!思わぬサプライズに会場からはどよめきが……。

 海帆のペンの握り方から翔太のマフラーの巻き方まで、短い作品だからこそ、細部にまでこだわりたかったという田中さん。キャラクターへの思いが伺える話に、参加者も真剣に耳を傾けた。

 さらに話題は『クロスロード』を彩る楽曲の話へ。――と、ここで再びサプライズが!田中さんに続き、主題歌「クロスロード」の編曲を担当した多田彰文さん、歌を担当したやなぎなぎさんがゲストとして登場!

 多田さんが実際の音源を流しながら、楽曲について解説。作詞は新海監督と多田さんが共同で行ったが、2人が話し合いを進めていく中で、歌詞が少しずつ変化していった過程も紹介された。

 また、やなぎさんからは、監督から収録時に言われたという、「登場人物の目線ではなく、第三者の視点」で歌うことを心がけたことなどが語られた。

 最後に4人それぞれに質疑応答タイムを設け、参加者の質問に答えてセミナーは終了。充実した内容に、会場からは大きな歓声と拍手が響いた。

 facebookにて、この他の写真も公開中です!(セミナーの裏側がのぞけるかも??)

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講師紹介

新海 誠 しんかい まこと

1973年、長野県生まれ。アニメーション監督。2002年、個人で制作した短編作品『ほしのこえ』でデビュー。同作品は、新世紀東京国際アニメフェア21「公募部門優秀賞」をはじめ多数の賞を受賞。2004年公開の初の長編映画『雲のむこう、約束の場所』では、その年の名だたる大作をおさえ、第59回毎日映画コンクール「アニメーション映画賞」を受賞。2007年公開の連作短編アニメーション『秒速5センチメートル』で、アジアパシフィック映画祭「最優秀アニメ賞」、イタリアのフューチャーフィルム映画祭で「ランチア・プラチナグランプリ」を受賞。2011年に全国公開された『星を追う子ども』では、これまでとは違う新たな作品世界を展開、第八回中国国際動漫節「金猴賞」優秀賞受賞。2012年、内閣官房国家戦略室より「世界で活躍し『日本』を発信する日本人」として感謝状を受賞。次世代の監督として、国内外で高い評価と支持を受けている。2013年『言の葉の庭』が全国公開され、ドイツのシュトゥットガルト国際アニメーション映画祭にて長編アニメーション部門のグランプリを受賞した。